研究概要 |
近年、フラットパネルディスプレイや蛍光灯に替わる次世代型の照明としてEL素子の開発が望まれている。EL素子は構成する材料より、無機EL、有機EL、化合物半導体LED等に分類される。筆者はその中でも、原料・製造コストおよび耐久性を考慮した場合、もっとも実用に近いのは無機ELであると考える。本研究では酸化スズを母体材料とし、Mnを発光層とする新しいタイプの無機ELを提案した。電気伝導性をもつ母体材料酸化スズをチタン酸バリウム層中に閉じ込めることで、高効率化が期待される。また、蛍光体の最近の研究では、蛍光体の粒子がナノサイズにまで小さくなることによって、量子効果により発光効率が向上することが示されている。本研究では、まず筆者らが開発してきた静電スプレー法で合成される超微粒子の特徴について詳細に調べた。その結果、100nm程度の球状粒子からなる微粒子層の堆積条件が明らかになった。一方X線回折法でこれらの堆積層の結晶子径を求めると、数nmであることがわかった。このことは100nmの球状微粒子は数nmの一次粒子からなる凝集粒子であることを示している。そこで作製された超微粒子酸化スズの電気的特性を評価するために、水素ガスに対するガスセンサー測定を行った。その結果、結晶子径についてはほぼXRDの結果と一致しており、ナノ微粒子が生成していることがわかった。続いて実際にMnをSnに対して0.5,5.0,10.0,15.0wt%添加した微粒子層を石英ガラス基板上に堆積させ、無機EL素子の作製を行った。素子の基本構造は、石英ガラス基板//酸化スズ透明膜//SnO_2:Mn微粒子発光層//金電極からなっている。SnO_2:Mn発光層は絶縁破壊を防ぐために、ゾルゲル法を用いてチタン酸バリウムでコーティングした。20kHz、±600Vの方形波高周波電圧を用いて電気特性を評価した。
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