研究概要 |
(1)振動マッハ波に対する境界層の受容性 平板前縁に入射する振動マッハ波に対する超音速境界層の受容過程を数値計算によって詳しく調べた.その結果,前縁のごく近傍における撹乱は,振動Stokes層的ではなく,境界層の発達に伴う準定常的な振動であることを明らかにした. (2)超音速境界層の乱流遷移の観察・変動計測 画像の輝度(明るさ)変化が密度勾配に比例するように光学系を設定したシュリーレン法により得られた画像情報から超音速境界層の密度分布、速度分布、壁面圧力分布を定量的に計測する手法を開発した.この定量化シュリーレン法を用いて超音速境界層の乱流遷移過程を画像計測し,得られたアンサンブル平均画像から,層流から乱流までの遷移全体を密度勾配の場で捉えた.層流境界層は,y/δ(境界層厚さ)=0.3〜0.4に極大値をもつ明るい帯状の領域(層流の輝線)として観察され,乱流境界層は,一様な明るさの幅広い領域の壁近傍(y/δ【less than or equal】0.1)に極大値をもつ輝線(乱流の輝線)が現れる.遷移が始まると,層流の輝線が崩壊して境界層厚さが急増し,層流境界層厚さの約20倍で乱流の輝線が現れる様子が捉えられた.遷移初期段階では,壁近傍の輝度が(最大値に対して相対的に)増す.これは,壁近傍の密度勾配が層流境界層の状態から増すことを意味し,壁近傍の速度勾配すなわち局所摩擦応力係数c_fが増加すると判断できる.境界層厚さに対する乱流の輝線の幅は,層流の輝線に比べると非常に薄く,乱流状態に達すると新たに動粘性係数vと摩擦速度u_τに支配される構造が壁近傍に形成されることに対応していると考えられる.以上のような超音速境界層の乱流遷移過程を特徴づける現象がシュリーレン法によって得られたアンサンブル平均画像によって捉えられ,定量化シュリーレン法が超音速境界層遷移の計測において非常に有効な手段であることを明らかにした.
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