研究概要 |
本研究は,水質環境問題が深刻でかつデータ入手が困難なインドネシア沿岸域において,衛星データを利用した水質評価のための基礎研究と位置づけられる。即ち,衛星データ及び現場データを収集し,地形が複雑でかつ現地調査の難しい沿岸域の濁度推定アルゴリズムの開発・検証を行う。そして,その後GIS(地理情報システム)の手法を使って衛星/現場データベースを構築することにより,インドネシア沿岸の水質環境を総合的に評価するための基礎データベースを作成することが目的である。研究の成果としては,まず可能な限り過去に取得された衛星データを収集し,インドネシア沿岸域の状況及び衛星ASTERデータによる濁度推定の可能性について検討した。具体的には周辺水域の概略把握の意味で,Terra/ASTER(解像度30m)を使った水域の目視判読を試みた。ASTERデータが比較的新しい衛星データであるため,入手はジャカルタ周辺の2シーンに限られたが,それらの画像から沿岸域に伸びる河川の河口部には土壌流出や水田(又は養殖場)と考えられる土地被覆の様子を読み取ることができた。次にTOPEX/POSEIDONデータを用いて,ジャワ島南部と北部の水域における波高分布を把握した。その結果,ジャワ島の南部と北部では波浪環境が大きく異なることがわかり,水質も大きく異なると予想された。さらに,本年度は中分解能衛星のMODIS及び高解像度衛星であるTerra/ASTERデータを使ったクロロフィル・濁度推定の可能性についても検討した。当初予定していたインドネシアにおける実測は危険を伴うために行えなかったが,日本の沿岸(宍道湖・中海,広島湾)において検証実験を行った。その結果ASTERの近赤外波長のデータがASTERを使った濁度推定に有効であると考えられた。さらに,最近のインドネシア周辺海域における植物プランクトン分布の状況を把握するために,同海域の衛星海色センサのクロロフィル画像を,NASAのホームページから入手して,画像データベース化した。本研究によりインドネシア海域においてリモートセンシング分野で貢献できる水質評価のための手法,データが整ったと考えられる。
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