研究概要 |
前年度に引き続き,丘陵地に位置する里地自然地域での微地形・管理・植生の関係について調査を行った。とくに,これまでの調査から植物種の多様性が高い立地であることがわかっている谷壁斜面端の刈り取り草原に注目して,詳細な環境調査を行った。その結果,この立地は環境傾度の大きな立地であることがわかった。その成立植生は,微細な光,水条件と対応しており,明環境から暗環境,湿潤環境から適湿環境に及ぶ多様な環境に応じた種組成の変化が確認された。草原生植物や一部の湿地生植物には裾刈りによる光環境の改善が大きな影響を及ぼしていることが予想された。この立地には,丘陵地斜面の管理された雑木林にみられるような種も多く確認できることから,丘陵地里地において,優先的に管理の維持を行う必要がある地形立地および管理立地であると結論づけられた。 また,台地に位置する里地自然地域では,上記のような立地で,やはり高い種の多様性が確認できたものの,この立地内での種組成は大きく異ならないことが明らかとなった。また,台地面や段丘崖に位置する雑木林で,管理後にみられるような植物種の出現も決して多くないことから,こうした種の保全には,雑木林自体の適切な管理も不可欠であることがわかった。 これまで3年間の結果を総括すると,微地形によって成立する植生が大きく異なることがわかった。これは,土壌水分条件や光環境が大きく影響した結果であることがわかった。さらに,微地形の違いによって管理による植生の応答は異なったことから,上記のような環境条件が支配的な立地と,そうではない立地が存在することがわかった。すなわち,植生管理が効果的な場所が存在することがわかった。台地と丘陵地では,微地形配列とその連鎖関係が異なることによって,管理上重要な立地が異なることがわかった。以上のような結論は,今後の効率的な植生管理計画に応用可能である。
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