研究課題
若手研究(B)
ウシ乳腺において母体から乳汁中への有害物質の移行防止に機能し、牛乳の質を左右するタンパク質の遺伝子として、ウシMRP1のcDNAを新たに単離した。ウシより単離したMRP1の基質特異性を調べたところ、ウシMRP1とヒトMRP1は、アミノ酸レベルでの同一性が約90%もあるにもかかわらず、両者の基質特異性は明確に異なることがわかった。この結果は、ウシMRP1とヒトMRP1との間で異なっている全体の10%ほどアミノ酸のいずれかが、MRP1による有害物質の認識および輸送に直接関与しているアミノ酸であることを示唆している。そこで、両者の間で異なっているアミノ酸を分子生物学的手法によって別のアミノ酸に改変した変異MRP1を作成、その変異体を発現ベクターに連結後、ヒト由来の培養細胞に導入した。変異体のMRP1を発現している培養細胞が数種の抗がん剤に対して示す耐性度を測定し、野生型のMRP1と比較してその耐性度のパターンに変化がないか調べた。その結果、MRP1の後半部に変異を導入したウシMRP1を発現する培養細胞の示す耐性度のパターンが、野生型のウシMRP1のそれと比較して変化していることがわかった。この結果から、変異を導入したアミノ酸が、MRP1の基質の認識および輸送に関与していることが示唆された。今後、観察された耐性度の変化について精査することにより、乳腺におけるMRP1の有害物質の認識および輸送のメカニズムについての解析を進める。
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