研究概要 |
本研究では、シロアリの味覚感覚の特徴を電気生理学実験および行動実験によって明らかにするとともに、電子顕微鏡観察による味覚感覚毛の特定を行うことを目的とする。 昨年度の研究により、ネバダオオシロアリ(Zootermopsis nevadensis)口器Labial palp上の味覚感覚毛基部に存在する味受容細胞数は5個であること、アカマツ(Pinus densiflora)への応答を抑制するニーム(Azadirachta indica)の作用は味受容細胞を破壊する作用ではなく一時的なマスキング効果であることを明らかにした。 本年度はシロアリの味受容細胞5個の各機能およびシロアリが好んで食害すると考えられる様々な樹種の辺材部水抽出物に対する応答特性を検討した。 標品に対して別個に味覚応答を確認したところ、各々10mM NaCl,50mM Glucose,200mM NaCl,25mM Citric acid,10mM Glycinに各々反応する5種類の異なるインパルスが確認された。但し後2者に関してはその機能がまだ不確定である。従って味受容細胞5個のうちの3個は各々Water, Salt, Sugarと推定、他の2個の機能については現在検討中である。 次に様々な樹種の辺材部水抽出物に対する応答特性を行動実験で確認したところ、樹種間での有意な差は生じなかった。電気生理実験を行ったところ、全ての樹種においてレコーディング開始直後から持続的にインパルスが生じるタイプの応答を示した。しかし出現するインパルスの形状は個々に異なることから、行動実験で同様な嗜好性を示す樹種に対してであっても、味受容細胞レベルでは異なる反応を生じていることが明らかとなった。
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