研究課題/領域番号 |
14760143
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
農業経済学
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研究機関 | 広島大学 |
研究代表者 |
矢野 泉 広島大学, 大学院・生物圏科学研究科, 助教授 (90289265)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
1,900千円 (直接経費: 1,900千円)
2003年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2002年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | グローバル経済 / 条件不利 / 多品種少量生産物 / 地場流通圏 / 地域の福祉 / ローカル経済 / 地場市場 |
研究概要 |
本年度は研究課題に即し、理論的見地として以下の2点を整理した。第1に、既存の農業経済学分野の研究において、農村の「条件不利」を規定する要素として、農業の生産関係に関連した土地利用や生産費等が重要視されてきたのに対し、農村の社会的要素(高齢化率や農家の生きがい等)及び農産物の流通過程を「条件不利」の規定要件としてとりあげた点である。第2に、従来指摘されている「条件不利」という経済環境は、あくまで経済効率性を第一義とする現代のグローバル経済の枠組みにわが国の農漁村を組み込んだ際にその不利性が問題となるという点である。 実態調査は、昨年度に引き続き、島根県石見町と山口県下関市彦島で行い、特に両地域での生産物の商品特性とその流通経路に注目した。石見町は、JAおおち管内の比較的大規模な米と野菜の産地であるが、その一方で高齢化し系統出荷が困難な農家も多く存在し、彼らの生産物は多品種少量という特徴を持っている。彦島は農業ではなく沿岸漁業地域であるが、小規模零細でその生産物(漁獲物)が多品種少量である点は高齢化が進む農村と共通である。こうした地域の生産物は、農水産物が本来商品特性としてもつ商品の量的・規格的・品種的供給の不安定性をより強く持つ。一方、わが国の農水産物市場は、グローバル化と国内における量販店主導の流通再編により、流通の大規模化、広域化、画一化が進みつつあり、この流れへの適応に上記の産地は多くの困難を抱えている。これら産地では、生産者やその家族による商品化によって地場流通圏を確立することによって、資本の循環を維持し、同時にもたらされる生産者の生きがいという福祉的効果がその経済活動のさらなるインセンティブとなっている。これは対グローバル経済における条件不利ではなく、グローバル経済下のオルタナティブな経済活動としてとらえることができる。
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