研究概要 |
日米における農産物直売施設(ファーマーズ・マーケット)の現状を把握し,日本の農産物直売所とアメリカのファーマーズ・マーケットの実態を分析した。平成15年度に実施した予備調査に基づき,平成16年度は経営者への聞き取り調査に加え,日米で出荷者へのアンケート調査を実施した。 調査の結果,日本の農産物直売所が農業サイド主導により,農業振興や農業経営などいわゆる川上側の利益に重心を置いた経営されていることが多いのに対し,アメリカではコミュニティや消費者サイド主導により運営され,日本と比較において,よりコミュニティや消費者などの川下側の利益に重心を置いて運営されているものが多いことが明らかとなった。その重心の違いに由来し,意思決定や販売方法,出荷者と農産物直売施設との関係など,日米で農産物直売施設経営に関するさまざまな相違点が存在することが明らかにされた。 また調査により,1990年代頃から急速に発達した日本の農産物直売所の中には,経営に行き詰まりをみせているものも少なくないことが明らかとなった。一方,日本に先んじて発生したアメリカのファーマーズ・マーケットには順調に成長している経営も多く見られた。日本の農産物直売所は農業サイドに過剰に経営の重心を置くことにより,経営が硬直的になっている可能性があることが,理論的な考察からも明らかとなった。本研究が明らかにした,より消費者サイドに重心をおいたアメリカのファーマーズ・マーケットの経験や経営ノウハウが,今後の日本の農産物直売所の経営に示唆を与えるものと期待される。 それらの研究成果は,日本農業経営学会(平成14年10月,平成15年10月),九州農業経営学会(平成15年10月)でも報告し,報告論文としても発表している。また,研究成果報告資料(平成16年3月)を作成した。
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