研究概要 |
本研究の目的は,外部経済効果を踏まえた最適な農業・農村整備の整備内容・水準を定量的に評価でき,かつ調査費用を抑制できる計量経済学的手法(選択実験,選択型コンジョイント分析)を開発することである。本年度の研究実施計画は,選択実験の結果の移転可能性について検討することである。 環境との調和に配慮した事業計画案を評価する選択実験を設定した。その属性には,環境への配慮の水準を表す指標生物(代理指標)としてチュウサギの生息密度を取り上げる一方,環境の利用価値を捉えるために野鳥を観察するための水田(野鳥観察田)と子供たちが水田に生息する生き物を捕まえられる水田(ふれあい水田)の整備を設定した。これらの他に負担金属性を設定した。確率係数ロジット・モデル(random parameters logit model)により分析した結果,すべての属性変数は確率的に変動することが示された。この結果より,選択実験の計測結果を利用して求めた整備計画の環境便益を移転するにあたっては,個人特性を考慮しなければならないことから,環境便益の移転が無条件には成立し得ない可能性を指摘できる。特に,地域によって特性別個人の分布が異なる場合には,その分布を無視した平均値のみの移転は不適切である可能性が高いことが示唆された。加えて,一般に定量化可能な個人特性だけでは評価に対する異質性を完全には捉えられないことから,個人の異質性を考慮した便益移転にも限度があることが示唆された。
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