研究概要 |
近年環境保全を目的としたコンクリートやセメント系複合材としてのリサイクル材の活用に注目が集まっている.リサイクル骨材としてのセメント複合材の需要の増大の中で,その工学的性質を把握する必要性に迫られている.本研究は一軸圧縮状態でリサイクル骨材を使ったセメント系複合材のヤング係数,極限強さや応力〜ひずみ関係などの基本的力学性状を調べるための実験研究である.コンクリート,煉瓦,石材,木片チップの4種類のリサイクル骨材を本研究の対象にしている.長さ100mm×直径50mmの供試体を20個用意し,それらを7日間養生した.その結果,線形的な応力〜ひずみ関係においてひずみの初期段階と最終段階で非線形性が認められた.石材を骨材とするセメント複合材は各種パラメータにおいてより高い値を示した.平面モルタル供試体のヤング係数と終局強度はリサイクル材を骨材とするセメント複合材の強度より大きくなった.また,木片骨材を使ったセメント複合材のヤング係数と終局強度は他のセメント複合材に比べてかなり低い値となった. この研究は円弧すべり線内のすべり土塊に対するモーメントの釣合い式に一工夫加えたアースダムの新たな斜面安定解析法を提案している.すなわち,分割細片の集合を任意の細片を境にして左側ブロックと右側ブロックに分ける.そして,それぞれのブロックに対してモーメントの釣合い式をとり分割細片側面に作用する内力の大きさとその作用点を求める.もちろん,細片一つ一つに対する力の釣合式は満足させている.この方法によると,条件式の数と未知数の数が一致して問題は静定化されることになる.つまり,従来の方法だと未知数の数が条件式の数より多い不静定問題となるので解を得るためには何らかの仮定を導入する必要がある.そのような仮定を必要としない本解析法で得られる解は厳密解といえる.本法の妥当性を検証するため非平行内力の仮定を用いた従来の方法とここでの提案法とを比較検討した.その結果,提案法から得られる斜面安全率の値は一般の従来の方法に比べて小さくなる傾向があることが明らかとなった.
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