研究概要 |
本研究の目的は、養液栽培施設をはじめとする植物栽培施設において必要とされる電気的な負荷を、従来未利用であった太陽光発電エネルギにより供給し、施設を稼動させる上でのコストの低減化を図ろうとするものである。昨年度来の測定により、設置した太陽光発電システムの一日あたりの発電量(DC)は、季節や天候状態によって異なるが、平均で1.6kWh程度であった。これにより使用できる電力量(AC)は1.3kWh程度となるため、ポンプ(200W)では6.5時間、ファン(64W)では22時間の運転が可能であり、間欠運転により余剰電力が生じることが明らかとなった。本年度は、給液ポンプと通気用ファンを組み合わせた効率的な運転条件を検討するとともに、実際の栽培施設においての条件に照らし合わせた運転条件の試算を行った。 組み合わせ運転条件としては、まず、給液ポンプをタイマーにより15分ON-45分OFFの間欠運転をさせ、ポンプ停止時に通気用ファンを30分運転させるサイクルを6:00〜19:00の間に行った。この運転条件では、消費電力量は0.91kWhとなり、朝夕の時間帯を考慮しても、本システムを用いての毎日の運転が可能であることが確認された。次に、ポンプ運転条件は変えず、ファンを温度条件によりON-OFFさせた(6〜8月の夏季において設定温度25〜35℃)。その結果、消費電力量は0.7〜2.3kWhとなり、設定温度が低いと1日の発電量ではまかなえなくなるため、換気用ファンの運転は温度条件とタイマー制御を組み合わせるなどの工夫が必要と考えられた。 今回得られた条件を元に、実際のハウスを想定して、運転条件の試算を行った。一例として軒高5m、桁高3m、面積11×54m=594m^2のハウスにおいて、栽培面積が3×0.5m×128ベッド=192m^2とし,0.75kWのポンプを2基上記の条件で稼動させた場合を考えた。この場合、単位面積あたり15.6Wh/m^2の所要動力となり、今回用いたソーラーパネル面積(4.35m^2)の約2〜3倍の面積が必要とされた。本システムでは13m^2程度の栽培面積をまかなえるものと考えられる。また,ファン1基あたりの換気率が0.81m^3/(m^2・h)となるため、10基のファンを稼動させるとして、必要消費電力量は0.64kWhとなった。この結果から、連続運転は困難であるが、3〜4時間に1回の換気であれば、本システムで供給可能な値と考えられる。 今回得られた結果は、植物栽培施設内のエネルギ負荷軽減や低コスト化、自然エネルギの有効利用を考える上でのひとつのデータとなるものと考えられる。今後はエネルギ有効利用の観点から、栽培施設内の冷房あるいは暖房を効率的に行うための地中熱交換のためのエネルギ供給源としての検討についても行っていく予定である。
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