研究概要 |
広義の「制限酵素」の範疇に属し,レアカッター酵素としての特徴をもつLAGLIDADG型ホーミングエンドヌクレアーゼ(HEase)の遺伝子群を古細菌ゲノムから多数単離・同定した.具体的な研究成果は次の通りである. 1)古細菌ゲノムに散在する可動性イントロン内部にopen reading frame(ORF)を見いだし,これらがLAGLIDADGファミリーに属する部位特異的二本鎖DNA切断酵素であることを実験的に明らかにした.19種の新規な認識配列をもつ酵素を同定し,I-ApeI,I-ApeII,I-PogI,I-Tsp061I等と名づけた.いずれも14〜22bpの長さの偽回文配列または非回文配列を認識するレアカッター酵素であることを明らかにした. 2)I-ApeIおよびI-ApeIIの認識配列に一塩基置換を導入してDNA切断活性を検討した結果,これらの酵素が標的配列内の特定の数塩基を厳密に認識することを示した. 3)I-ApeIIは立体構造がフォールドレベルで異なるHis-Cys boxファミリーHEase,I-PpoI(細胞性粘菌Physarum polycephalum由来)と同一塩基配列を認識するイソシゾマーであった.塩基置換基質に対する切断効率の違いから,イソシゾマー間で基質認識様式が異なることを示した. 4)I-PogIの認識配列の特徴から,このHEaseをコードするイントロンの転移機構として,近傍に挿入されている別のイントロンと同時に転移する"co-homingモデル"を提案した. 5)I-Tsp061Iの結晶について空間群R32,格子定数a=b=95.4Å,c=192.2Å,到着分解能2.3ÅのX線回折データを得た.多波長異常分散法によって精密立体構造を解析することに成功し,その原子座標をPDBに登録した(アクセッション番号:1VAW).分子のほぼ中心に位置する二本のαヘリックスがLAGLIDADG活性モチーフに相当し,その両側に広がる二つのβサドル構造(各々4本の逆平行βシートにより形成される)がDNA結合表面であると考えられた.
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