研究概要 |
平成14年度は、担子菌Lentinus edodes(シイタケ)において、主に遊離型D-アラニンの分布について検討するとともに、担子菌類では初めて同菌の子実体より、D-アミノ酸生合成酵素の一つであるアミノ酸ラセマーゼ(既知のアミノ酸ラセマーゼと異なる酵素学的諸性質を保持)を精製した。そこで、平成15年度は,前年度の結果を踏まえ,以下の点について検討した。 (1)L.edodesにおける遊離型D-アミノ酸の分布の解析 高速液体クロマトグラフィーを用いた光学分割法により、L.edodesの菌糸体、未成熟子実体および成熟子実体の組織中に、遊離型D-アラニン、遊離型D-セリンに加え、少なくとも遊離型D-グルタミン酸および遊離型D-グルタミンを検出した。また、それら遊離型D-アミノ酸の含量は各生育段階において差があることから、各生育段階に対応した生理的役割を持つことが考えられた。 (2)L.edodes由来のアミノ酸ラセマーゼの遺伝子レベルでの解析 精製した新規アミノ酸ラセマーゼからN末端および内部アミノ酸配列を決定した。それらのアミノ酸配列に基づきプライマーを合成し、PCR法およびRACE法により本酵素をコードする遺伝子およびcDNAの全長を取得した。得られた塩基配列の解析の結果、本酵素は496アミノ酸残基をコードしていることが判明した。また、本酵素のアミノ酸配列の相同性解析の結果、既知のアミノ酸ラセマーゼとは相同性を示さなかった。以上の結果、L.edodes由来のアミノ酸ラセマーゼは、酵素学的諸性質の面に加え、遺伝子構造の面からも既知のアミノ酸ラセマーゼとは異なる新規性の高い酵素であることが示され、L.edodesのD-アミノ酸代謝には、極めてユニークな性質を持つ酵素が関与することが示唆された。
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