研究概要 |
イソフルラシはGABA_A受容体に対してチャネルブロック作用を持つことが報告されているが,その詳細存メカニズムは明らかではない。昨年度研究では揮発性麻酔薬の増強作用を消失させた変異GABA_A受容体[α_2(S270I)β_2]を用いてこのチャネルブロック作用を解析し,その結果チャネルブロック作用は1)増強作用とは異なる部位を介して生じていること,2)エーテル性麻酔薬に選択的であること,3)GABA_A受容体中のSer270変異が導入されたサブユニットの数(stoichiometry)に依存している可能性があることを報告した。本年度研究でもアフリカツメガエル卵母細胞発現系を用いて引き続きイソフルランのGABA_A受容体に対するチャネルブロック作用について検討した。 α_2(S270W)β_2と同様に自発性チャネル活性(GABA非存在下でもチャネル活性を示す)のあるα_2(V257W)β_2およびα_2(T262W)β_2では,α_2(S270W)β_2と異なりイソフルラン単独投与によりチャネルがさらに活性化され,α_2(S270W)β_2で認められたチャネルブロック作用は自発チャネル活性特異的ではなく変異導入部位特異的に生じていると考えられた。またα_2(T261W)β_2ではイソフルランのGABA誘発電流増強作用が約2.5倍増加した。このことからThr261への変異導入によりチャネルブロック作用が減弱した結果,相対的に増強作用が増加した可能性が考えられ,Thr261がイソフルランのチャネルブロック作用に重要な残基である可能性が示唆された。興味深いことにThr261はイオンチャネル孔に面した残基であり,またSer270とは同じ膜貫通領域に存在するがヘリックスモデル上は180度対をなす位置に配位することが予想され,Ser270とThr261の空間的位置関係がイソフルランの作用に重要である可能性が考えられる。
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