研究概要 |
1、HeLa細胞とHT1080細胞において、fibronectin, lch-1, elk1の内在性遺伝子を用いて熟ショックが選択的スプライシングに及ぼす影響について検討した。その結果、clk1にのみ熱ショックに応答してスプライシング様式の変換が見られた。37℃細胞培養時にはclk1野生型と、選択的スプライシングによりエキソン4が排除されたclk変異型の両産物がRT-PCR検出法で観察される。熱ショック処理を行うと、野生型のclk1産物のみが観察された。また、ヒトにはclk2,clk3というclk1類似遺伝子が存在し、clk1同様の選択的スプライシング様式があることから、これら遺伝子についても解析を行った。clk3は、clk1と同様に熱ショック応答性スプライシング様式の変換が見られたが、clk2では変化は見られなかった。さらにclk1のミニ遺伝子をSF2発現プラスミドと同時に細胞に導入すると、熱ショック時にSF2の発現量依存的にclk1野生型のスプライシング誘導を増加した。以上の結果は、熟ショック時に見られるclk1の分子変換にSF2の関与を示唆している。今のところ、直接的か間接的作用であるのかはわからないが、調節を受けるclk1のエキソン4上には予測上のSF2結合配列が複数存在する。 2、エキソン結合部位複合体成分の一つであるRNPS1は核スペックル局在を示すスプライシング調節因子である。SF2との機能的相互作用が示唆されていることから、熱ショック、UV照射によるSF2様凝集効果をRNPS1で検討した。しかしながらストレス下でRNPS1の凝集は見られなかった。以前の解析でSRタンパク質の一つであるSC35も凝集がみられないことからストレス下ではSF2依存性標的遺伝子のみの分子変換が見られるものと考えられる。
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