研究課題/領域番号 |
14770067
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
病態医化学
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研究機関 | 埼玉医科大学 |
研究代表者 |
松永 俊之 埼玉医大, 医学部, 助手 (80306274)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
3,600千円 (直接経費: 3,600千円)
2003年度: 1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2002年度: 2,200千円 (直接経費: 2,200千円)
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キーワード | 糖化高密度リポタンパク / 血管内皮細胞 / 活性酸素 / NADPH oxidase |
研究概要 |
我々は糖化修飾HDLによる血管内皮細胞のアポトーシス機序を解明するために、細胞アポトーシスと密接に関連することが知られる細胞内活性酸素種の変動に着目した。そこでまず、in vitroにおいてHDLを各種濃度のグルコースで暴露することにより糖化酸化HDL (gly-ox-HDL)を調製してヒト大動脈血管内皮細胞(HAEC)培養液中に添加したところ、細胞からのH_2O_2産生量が著増する興味深い結果を得た。また、活性酸素関連酵素の阻害剤での前処理することにより主な活性酸素種の産生源を検索した結果、NADPH oxidaseの阻害剤であるdiphenylene iodonium処理によりgly-ox-HDLによるH_2O_2産生が有意に抑制されたため、gly-ox-HDLによるH_2O_2産生には主にNADPH oxidaseが関与することが示された。また、gly-ox-HDL処理したHAEC中では活性酸素消去系酵素であるsuperoxide dismutaseやcatalaseのmRNAおよびタンパクレベルの相対的な減少が認められたため、これら消去系酵素の低下もgly-ox-HDLによる活性酸素種の実質上の増加に関与していると思われる。 また、HAECからのNO産生にgly-ox-HDLが関与するかどうか検討した結果、gly-ox-HDL処理によりHAECからのNO産生量の減少が認められ、HAEC中のNO合成酵素のWestern blot法の結果によりこのNOの減少はeNOSの減少によることが示唆された。 HDLをグルコースで暴露すると、まずHDL粒子のアポタンパクにグルコースが付加し、微量金属の存在下によりさらなる酸化が起こることによりAGEの形成が起こる。今回発見したgly-ox-HDL処理したHAECでの活性酸素種産生増加機序を解明するために、金属イオンのキレート剤であるEDTA存在下で酸化を起こさず糖化したgly-HDLと銅イオンで酸化したox-HDLを調製して糖化修飾と酸化修飾のどちらが活性酸素産生に関与するか検討したところ、ox-HDL処理HAECでのH_2O_2産生が顕著であったため、HDL粒子の糖化による血管内皮細胞での活性酸素の産生には酸化修飾が重要であることが示唆された。また、gly-ox-HDL粒子中に高濃度の高分子AGE産物やlysophosphatidylcholineを検出した。これらは共に血管内皮細胞中での活性酸素産生を惹起することが報告されているため、これらもまたgly-ox-HDLによる血管内皮細胞での活性酸素産生に関与しているかもしれない。 これらの成果より、糖化HDLは血管内皮細胞での活性酸素種産生を亢進することにより、ox-LDLと同様に内皮細胞アポトーシスだけでなく動脈硬化の進展における危険因子となりうることが明らかとなった。
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