研究概要 |
これまでに申請者は肺腺癌に見られる遺伝子異常の細胞生物学的な意義について検討を行ってきた。その過程で、変異型K-rasが気管支上皮細胞の走化性を亢進させることみいだし、それがras-MEKとras-PI3K-Akt経路の両者を介して引き起こされることを明らかにしてきた。申請期間は、これらの経路がどのような機序で細胞走化性の亢進を引き起こすのかを明らかにすることを目的とし、変異K-ras導入細胞株および各種肺癌細胞株を用い細胞外基質(Laminin-5)やその分解の酵素(MMP-9,2)の発現について検討を行った。 1.肺腺癌細胞株の約半数でLaminin-5やMMP-9,2の発現がWestern blotで観察されたが、これらの発現と細胞走化性の程度や、K-ras遺伝子変異の有無、Aktの活性状態との相関は見られなかった。 2.Laminin-5やMMP-9,2の発現は、変異K-rasやAkt遺伝の導入によっても増加することはなかった。 以上から、変異K-ras-PI3K-Akt経路による気管支上皮細胞の走化性亢進は、Laminin-5やMMP-9,2の発現誘導以外の機序で引き起こされることが示唆された。
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