研究概要 |
本研究では細胞死受容体のadaptor分子であるFas-associated death domain (FADD)の194 serineリン酸化がもたらす抗癌剤感受性への影響とその分子メカニズムについて前立腺癌細胞を用いて解析した。 [結果]初年度の研究では、前立腺癌細胞株であるLNCaP, PC-3,DU145に野生型FADDあるいはリン酸化類似のFADDを強発現させるとetoposide誘導性c-jun-NH_2 terminal kinase (JNK)の活性化とこれに依存したアポトーシスが強く促進されること(Jpn.J. Cancer Res.,2002)、JNK活性化に依存してFas誘導性アポトーシスが活性化されることを明らかにした(Prostate,2003)。このことは、FADD194 serineのリン酸化が抗癌剤によるJNKの活性化を促進させ、Fas活性化を介する経路も加わり抗癌剤感受性を亢進させることを意味する。次年度では、前立腺癌細胞におけるMAPキナーゼ(JNK, p38,ERK)活性化に関連した抗癌剤感受性獲得のシグナル伝達について解析した。その結果、JNK活性化はBcl-2のリン酸化を誘導したり、p38とともにp53を効率良く誘導させることで、新規抗癌剤として注目されている2-methoxyestradiol (2-ME)誘導性アポトーシスを促進させることがわかった(Carcinogenesis,2003)。一方、ERKの活性化はこれら抗癌剤感受性獲得シグナルを有意に抑制し、同様の現象はビタミンA誘導体であるretinamide誘導性アボトーシスについても認められた(Mol.Carcinogen.,2002)。以上より、FADDリン酸化やこれに依存したJNKの活性化は複数のアポトーシス誘導シグナルに影響することで様々な抗癌剤の感受性を高めることが判明し、ERK活性化の阻害がその機能をさらに高めると考えられた。
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