研究概要 |
産業医学の分野で、その原因がSiO_2を骨格に持つ珪酸および珪酸塩化合物への曝露と考えられる自己免疫疾患を呈する症例群がある。特に、珪肺症における強皮症やSLEなどの合併は有名であるが、その発症機序は明らかではない。これまでの検討では、健常人末梢血単核細胞(PBMC)を珪酸塩化合物の一つ、Chrysotile B (CB)と共培養するとアポトーシスが誘導されること、しかし実際の珪肺症の症例では、Fas分子を介したアポトーシスの経路に抑制的に働く可溶性Fasが、血清中およびPBMCでのmRNA発現レベルで有意に高値を示し、同様に、同じ機能を有するDcR3遺伝子も高発現であることなどを見出してきた。これらの結果より、in vitroでは、珪肺症症例のPBMCはCBと共培養しても、アポトーシスが起こり難いことが想定されるが、その詳細な検討は行っていない。そこで本年度ではまず、健常人におけるPBMCのCB誘導アポトーシスについて検討した。アポトーシス検出法の一つであるTUNEL法では、1検体あたりのPBMCが3×10^6個は必要であった。将来的な珪肺症症例PBMCでのアポトーシス検出を考えると、もっと少量のPBMCで検出可能な方法が望ましいため、Annexin V法でのアポトーシス検出を試みた。この方法は、FITC標識のAnnexin VとPIによる二重標識法であり、アポトーシス早期の細胞はAnnexin V(+),PI(-)となり、アポトーシスが進行した二次的アポトーシス細胞やネクローシス細胞はAnnexin V(+), PI(+)となる。健常人3名のPBMC (1×10^6個/ml/well)を、3〜6日間50μg/mlのCBと共培養したところ、Annexin V(+), Pl(-)の細胞は3日目で20%前後みられ、時間と共に増加し6日目でcontrolより高値を示す傾向にあった。この傾向はAnnexin V(+), PI(+)の細胞にもみられ^この実験と平行して行ったアポトーシスの主要なレギュレーターである活性型caspase-3の測定でもみられた。
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