研究概要 |
1.対象介護施設における作業負荷の定量化と疲労自覚症の蓄積に関する調査 平成15年度上半期は,従業員149名の介護老人福祉施設において,実際に介護作業に従事している数名の従業員(以下介護者)を対象としてgroup focusing methodを用いたin depth hearingを実施した.その結果,疲労自覚症の出現に関係した介護作業の作業負荷要因として,1)移乗・食事・入浴・排泄介助の筋負担・姿勢負担,2)作業組織・介護担当分担,3)心理的要因(自己ストレスコーピング),4)作業環境,5)作業時間制と交代勤務制,6)共同作業のあり方(チームワーク),7)被介護者の自立程度などの視点が抽出された.また,フィンランド国立衛生研究所の研究グループと姿勢評価方法や労働負担の評価法の意見交換により,ベッドサイドケアと移乗に関する作業姿勢の定量化ツールが重要と考えられ,これらをもとに介護支援機器を用いた作業負荷の定量化の試みを学術誌へ発表した. 2.特定の介護作業における作業改善を通した評価尺度の評価 平成15年度下半期には,対象施設で傾斜計とタイムスタディを用いた調査を実施し,介護作業負荷作業の定量化と評価指標の検討を試みた.タイムスタディから得られた結果からは,施設の各フロアにおける身体介護量と作業者の訴えが相関している可能性が示唆された.傾斜計の結果からは,オムツ交換作業量とフロアでの介護役割担当によって,作業姿勢の定量化が部分的に可能であった.しかし,今回用いた自覚症しらべの結果からは,作業負荷に応じた訴えの増加は確認できなかった. 現場調査結果に基づいて,人間工学視点からみた作業負担軽減策が検討され,現場の介護者により採用された介護物品の移動と運搬に関する改善が実施された.
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