研究概要 |
歯の健康が全身の健康を増進することを示すため、自記式問診票によってもかなり正確な口腔衛生状態のデータが得られる歯科医師を対象にしたコホート研究を計画した。ベースライン調査は自記式問診票を歯科医師会を通じて配付・回収することにより実施する。収集する情報は、性・年齢、既往歴・家族歴、口腔衛生状態(喪失歯数、歯周の状態など)、生活習慣(とくに食習慣)、心理要因などである。対象者の追跡には、あらかじめ同意を得た上で、歯科医師共済制度で把握される疾病羅患・死亡状況を利用する。 本年度は11県の県歯科医師会においてベースライン調査を行い(対象者数11,582名)、3月15日現在約5,400名が参加した。昨年度までの実施分も含めると、参加者は16県歯科医師会の約9,300名に達している。さらに一部の県歯科医師会では、歯科医師共済制度を利用し、研究参加者の死亡および疾病罹患状況の追跡調査を開始している。 データ入力の終了した7県歯科医師会(有効回答者数6,726名[女件368名]、有効回答率47.1%、平均年齢±標準偏差52.0±12.3歳)における検討では、歯周病や歯牙喪失など研究参加者の口腔状態は一般住民(平成11年歯科疾患実態調査)よりも良好であったが、かなりの個人差があり、歯の健康と全身の健康・栄養との関連は十分に検討可能と考えられた。さらに横断的研究では、CPI2以上の歯周病に関連する要因(p<0.10)として喫煙、糖尿病、低いブラッシング頻度、低い精神的健康度、激しい運動をしないが認められ、また5歯以上の歯牙喪失の関連要因として喫煙、糖尿病、高血圧、低い精神的健康度が挙げられた。未調査の県歯科医師会でのベースライン調査を来年度中に終了し、以後は追跡調査を実施していく予定である。
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