研究概要 |
本研究の目的は、老人保健事業の実施主体である市町村が、市民の自主的な健康管理ツールである「健康手帳」についてどのような対応を実施しているかを明らかにすることである。本年度は、全国市町村3,255における老人保健事業担当課に対して行われた郵送法による調査票をもとに、有効回答が得られた2,445市町村について健康手帳の活用に関連する要因についての分析を行った。 健康手帳の活用、すなわち健康手帳への健康情報の書き込みの機会については、「健康教育・健康相談の機会」、「健診の機会」、「家庭訪問の機会」、および「福祉サービスの利用時」と回答した市町村の割合は、それぞれ68.7%、66.0%、17.5%、および13.7%であった。また、「健診結果を手帳へ記入している」と回答した市町村の割合は、59.5%であった。これらの活用機会を加算し、3項目以上の活用機会を有していると回答した市町村の割合は、53.3%であった。3項目以上の活用機会を有している市町村の割合は、人口規模が大きくなるにつれて小さかった。また、当割合は、高齢者割合、基本健診受診率、人口あたり保健師数の区分が大きくなるにつれて大きかった。さらに、独自の健康手帳を利用している市町村、および健康手帳の交付時に保健指導を実施している市町村においては、それ以外の市町村と比較して、3項目以上の活用機会を有しているとした割合は大きかった。多変量分析の結果、3項目以上の活用機会を有している市町村は、高齢者割合が大きい、独自の健康手帳を利用している、および交付時に保健指導を実施しているの3つの項目が統計的に有意に選択された。 健康手帳の交付は、個別の健康づくりを支援する市町村における代表的な保健事業のひとつと考えられる。本研究では、健康手帳の活用機会は、市町村の高齢者割合と有意な関連がみられ、人口の高齢化に即応した保健事業が全国的に推進されている実態が明らかとなった。また、独自の健康手帳を作成する、あるいは交付時の保健指導を実施するなどの市町村の取り組みが、利用者である住民側の健康手帳に対する利用意識の向上を促進し、住民自らが行う健康手帳の有効活用へと繋がる可能性があると示唆された。
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