研究概要 |
AKTは生存シグナル経路活性化を介してアポトーシス抑制や細胞増殖促進に働くセリン/スレオニンキナーゼである。我々は膵癌由来細胞株において、constitutively active型AKTがインスリン様増殖因子I受容体(IGF-IR)発現を増加させること、IGF-IR発現増加を介して膵癌細胞の浸潤能亢進を引き起こすこと、さらにdominant negative型AKT遺伝子導入によってIGF-IR発現および浸潤能が低下することをこれまでに明らかにしてきた(Tanno S, et al. : Cancer Res,2001)。本研究ではさらに、胆管癌外科切除組織では高率に活性化型AKTが胆管癌細胞で発現していること、胆管癌由来細胞株に活性化型AKTを強発現させると放射線抵抗性を獲得すること、反対にブロックによって放射線感受性を示すことを明らかにした(Tanno S, et al. : Cancer Res,2004)。我々はさらに膵癌由来細胞株において、抗癌剤gemcitabineで誘導されるapoptosisにおけるAKT生存シグナルの役割を解析中、AKTに加えてストレス応答性シグナルであるp38 MAPKがgemcitabineによるapoptosis誘導のメカニズムに深く関与すること、p38 MAPK活性化の阻害がgemcitabineによるapoptosisの抑制を引き起こすことを明らかにした(Habiro A, et al., Biochem Biophys Res Commun,2004)。これらの結果から、AKT生存シグナル経路は膵癌・胆道癌の放射線治療や化学療法における標的分子として重要であると考えられた。
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