研究概要 |
肝硬変モデルラットを作成し,その後TGF-βシグナル伝達を抑制させる変異型TGF-βII型受容体発現アデノウイルス(AdTβ-TR),コントロールアデノウイルス(AdLacZ),あるいは生理食塩水をラット尾静脈より投与し遺伝子導入を行った.遺伝子導入後1,2,3,5,7日目にラットを屠殺し,肝組織,血清を採取した.昨年度に引き続き肝再生因子を定量的RT-PCR法を用いて検索を進め,本年度はIL-6,VEGFについて追加し経時的変化を比較検討した.各サイトカインのプライマー設定は,ラットIL-6,VEGFに対する特異的遺伝子配列より決定した.変異型TGF-βII型受容体遺伝子導入後の肝臓内でのIL-6のmRNAレベルでの遺伝子発現は,遺伝子導入後1日目に対照群(生食水投与群)と比較し上昇傾向を示したものの有意差は無く,その後の発現上昇はみられずむしろ低下傾向を示Lた.VEGFのmRNAレベルでの遺伝子発現については,変異型TGF-βII型受容体遺伝子導入後7日目に対照群と比較し有意な上昇を示し,他の肝再生因子とは全く異なる発現亢進パターンを呈した.IL-6は炎症性サイトカインの一つで部分肝切除後早期に発現の亢進を認めることが多くの論文で報告されるなか本研究では発現亢進を認めず,その理由のひとつとして慢性炎症時と急性炎症時の違いが示唆された.またVEGFに関しては再生された肝細胞由来と考えられたため,昨年度より測定してきた他のサイトカインとは違うパターンを呈したと思われた.遺伝子導入後7日目以降21日目までも検討を行ったがmRNAレベルでの検討では大きな変化は認めなかった.さらに蛋白レベルでの検討として肝組織をすりつぶしELISA法にて各肝再生因子の測定を行ったが,種との交叉性の問題でうまく測定できず断念した.以上3年間に渡り研究を重ね,2004年12月Journal of Hepatologyに掲載した.
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