研究概要 |
我々はHCVコアのトランスジェニックマウス(Tgマウス)に四塩化炭素(CCl4)を腹腔内投与、もしくはジエチルニトロサミン(DEN)を経口投与することにより肝障害を誘導し、肝腫瘍発生モデルを構築した。今年度はこの肝腫瘍モデルにおける肝障害の遺伝子異常に与える影響として、癌抑制遺伝子の突然変異誘導について検討を行った。肝炎誘導により肝腫瘍が発生したマウスの腫瘍部、非腫瘍部それぞれよりゲノムDNAを抽出し、これまでに報告されているマウスの癌抑制遺伝子であるp-53、N-・H-・K-ras、βカテニンの各遺伝子についてSingle Strand Conformation Polymorphism法(SSCP法)を用い点突然変異の有無について検討した。p53はエクソン5,6,7,8について、N-・H-・K- rasはそれぞれエクソン1,2について、βカテニンはエクソン2についてSSCPが可能な大きさのフラグメントができるようにプライマーを設定した。[r-32P]ATPでプライマーをkinationした後PCRを施行、5%アクリルアミドゲルで展開しbandを観察した。二個体の腫瘍部、非腫瘍部について比較検討したが有意な点突然変異と考えられる異常なバンドは認めなかった。 次に遺伝子不安定性の検討のためマウスのマイクロサテライトマーカーを用いたマイクロサテライトインスタビリティの検討を行った。ほとんどの染色体を網羅するように28組のマイクロサテライトマーカーのプライマーセットを設定した。これらのプライマーを[r-32P]ATPでkinationし、PCRを行いバンドの移動や欠損をかんさつすることによりインスタビリティやLOHの検出を試みた。こちらも二個体の腫瘍部、非腫瘍部について比較検討したが有意なインスタビリティやLOHと考えられる異常は検出されなかった。以上のように今回の検討では我々の作成した肝腫瘍発生モデルの原因と考えられる遺伝子異常は検出されなかった。しかし今後さらに他の癌抑制遺伝子などについて詳細な検討が必要と考えられた。
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