研究概要 |
1)乳酸トランスポータを阻害するとニューロンでのグルコース利用率が増加する(in vitroおよびin vivo研究)(J Cereb Blood Flow Metab 2003;23(S1):19)。培養ニューロンに乳酸のトランスポータMCT2を阻害するα-cyano-4-hydroxycinnamate(4CIN)を投与したところ、細胞外液中の乳酸の利用が低下し、グルコース代謝が増加した。ラット安静時の脳グルコース摂取率は、4CINにより5から14%増加したが、MCT1およびMCT2をともに阻害するquercetinでは有意な増加は認められなかった。quercetinはニューロンおよびアストロサイトの乳酸トランスポータをともに抑制するため、アストロサイトでのグルコース摂取率の減少とニューロンでのグルコース利用率増加が、相殺された可能性がある。 2)培養細胞でのエネルギー基質の測定(Proc Natl Acad Sci USA 2003;100:4879-4884)。ニューロンのエネルギー基質としてグルコース、乳酸があり、相互の存在下での各基質の利用率を測定した。また、同様な基質の利用率を培養アストログリアについて測定し、生体内でのニューロンとグリアのエネルギー基質供給、利用についての共生関係を評価した。 3)2-deoxyglucoseのanalogueである蛍光色素2-NBDGによりin vivoの脳でニューロンのグルコース取り込みを証明した(J Cereb Blood Flow Metab 24:993-1003,2004)。ニューロンがグルコースを直接取り込むことは、証明されていない。大部分が乳酸のかたちで取り込まれると主張するものもいる。これまで[^<14>C]deoxyglucoseは、空間解像力が低いため細胞レベルでのglucose uptake局在を捉えることができなかった。そこでわれわれは蛍光色素を用い糖代謝を細胞レベルで評価するとともに、免疫組織学的に糖代謝の高い細胞(海馬の錐体細胞,小脳のプルキニエ細胞)を同定した。
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