研究課題
若手研究(B)
心臓由来のホルモンであるB-type natriuretic peptide(BNP)の測定は心不全の診断および治療効果判定に広く用いられている。閉経後女性に対するホルモン補充療法は、急性心筋梗塞の一次および二次予防の有効性が無いことが報告された。我々は閉経後女性にホルモン補充療法(HRT)の心筋への効果を検討するため、HRT前後でのBNPを測定した。その結果、HRTを行った症例ではBNPが上昇した。同時に施行した心エコー検査では心機能の低下は認めていない。以上のことから、エストロゲンはBNPの産生代謝に影響を与えている可能性がある。過喚気負荷試験は異型狭心症の特異的な検査である。この方法を用いて、エストロゲン投与の異型狭心症に対する効果を検討した。その結果、36時間の経皮エストロゲン投与は過喚起負荷試験による異型狭心症の発症を抑えた。その時の血管内皮機能は改善を認めた。エストロゲンの中止後、同じ検査を行ったところ、再現性を持って異型狭心症は誘発された。この事は、エストロゲン投与によって、血管内皮機能が改善され、その結果冠攣縮の発症が抑制された可能性がある。デヒドロエピアンドロステロン(DHEA)は副腎由来の男性ステロイドホルモンの一種であり、20歳ころをピークとして加齢とともに低下することが知られている。我々の検討ではDHEAが同年代の心不全患者に比較して低下していた。これら心不全患者の治療を行ったところ、心不全が改善するに従いDHEA血中濃度は上昇した。DHEAは新しい心不全の診断および治療を評価することができる因子になり得る可能性があると思われる。
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