研究概要 |
若手研究(B)補助金により、急性心筋梗塞発症時の冠動脈内炎症とサイトカインの産生について、臨床的研究を行った。急性心筋梗塞(AMI)では、冠動脈の炎症に引き続く冠動脈壁のプラーク破錠が新たな血栓の形成に関与する。今回の検討では、AMIの急性期治療として行われる血栓吸引療法で得られた冠動脈閉塞部位からの血液を用いて、炎症性サイトカイン動態を解析し、再狭窄との関係を検討した。当センターに入院した発症24時間以内のAMI患者30例を対象に、緊急冠動脈造影(CAG)後、責任血管の冠動脈内血栓吸引術を行い、冠動脈血液を採取した。対照として、末梢静脈血液を用いた。6ヵ月後フォローアップCAGを行い、QCA解析を行った。Interleukln(IL)-6をELISA法にて測定したPercutaneous coronary intervention(PCI)治療前後の冠動脈血IL-6濃度はそれぞれ13.2±1.7pg/mlと13.5±1.6pg/mlで、末梢静脈血7.9±1.0 pg/mlに比べて有意に高値であった(P<0.001)フォローアップCAGでは37%に再狭窄を認めた。PCI治療前後冠動脈血IL-6濃度は、再狭窄群の方が、再狭窄なし群より有意に高値を示した(PCI前:17.6 vs.10.6pg/ml, P<0.05,PCI後:21.8 vs.8.8pg/ml, P<0.0001)また、PCI治療後冠動脈血IL-6濃度はLate loss (r=0.64, P<0.001)やloss index (r=0.67,P<0.0001)と正の相関を認めた。以上より、急性心筋梗塞の発症時、IL-6は閉塞冠動脈局所で産生されること、また、PCI治療直後の冠動脈内IL-6は、慢性期の冠動脈再狭窄に関与することを明らかにした。
|