研究概要 |
PCR primerをアデノウイルス遺伝子のHexon3とHexon4領域に設定した。アデノウイルス2型、3型をtemplateとしてconventional PCRを行いウイルスDNAが増幅されることを確認した。次に臨床分離株アデノウイルスストック液から抽出したDNAをtemplateとしてconventional PCRを行い、アデノウイルス1,2,3,5,6,7,8,11型が特異的に増幅されることを確認した。アデノウイルス2型のPCR産物をTAクローニングベクターにクローニングし定量的PCRに使用する標準DNAとした。Syber Green Master Mixを用いて定量的PCRを行った結果、10から10,000,000コピーのアデノウイルスが定量的に検出可能であることが判明した。この方法を用いて臨床検体として咽頭ぬぐい液、便、血液(全血、白血球、血漿)、尿からウイルス検出を行ったところ、定量的にアデノウイルスを検出することが可能であった。造血幹細胞移植患児における血液、尿、便、咽頭粘液中からアデノウイルスゲノムをリアルタイムPCR法により検出し、その結果を定量的、経時的に解析した。対象患児は6名。移植前後で定期的に採取した各種検体からDNAを抽出しテンプレートとし、定量的PCRを行った。2名よりウイルスDNAが検出された。1名は移植前に尿中でのみ1.36X10^5copy/mlのウイルスDNAが検出されたasymptomatic infectionであり、無治療でウイルスは検出感度以下になった。1名はday28に血漿中で1.42X10^6copy/ml、便中で2.8X10^4copy/gのウイルスDNAが検出され、下痢、肝機能障害を伴ったdefinite adenovirus diseaseであった。初回ウイルス検出後速やかに抗ウイルス剤(Cidofovir)投与開始し、著明な効果を得た。肝機能正常化に平行してウイルス量は減少し、day56に検出感度以下になったのを確認後Cidofovir投与を中止した。定量的PCRによる造血幹細胞移植時の体内ウイルス量のモニタリングが、全身アデノウイルス感染症の迅速な確定診断および治療効果の判定に有用であることが示唆された。
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