研究概要 |
1.目的 乳児急性リンパ性白血病(ALL)細胞におけるアポトーシス関連遺伝子の発現量と患児の予後との関連を解析し、本遺伝子群の予後因子としての意義を検討する。本研究によって、より適切な治療強度を決定することにより患児の生存率の向上が期待されるのみならず、治療中のQOLや治療後の後遺症や社会適応についても考慮した治療法の選択が可能となると考えられる。 2.対象・方法 乳児ALL33例(男児15例、女児18例)の初発時骨髄細胞からmRNAを抽出しcDNAを作製、定量的リアルタイムRT-PCR法によってアポトーシス関連遺伝子(Fas, Toso, DcR3, caspase3, HIAP2, Apaf1, Bcl2)の発現を定量した。細胞内コントロールとしてGAPDHを用いた。アポトーシス関連遺伝子の発現量と乳児ALLの臨床的・細胞生物学的特徴および予後との関連を解析した。 3.結果 単変量解析において、Fas遺伝子低発現群の無病生存率は高発現群に比べ有意に不良であった(21% vs 61%, P=0.037)。また、HIAP2遺伝子低発現群は高発現群に比べて有意に予後不良であった(29% vs 58%, p=0.043)。Apaf1遺伝子低発現群は高発現群に比べ予後不良の傾向があった(24% vs 62%, p=0.068)。アポトーシス関連遺伝子の発現量、患児の年齢、性、初発時白血球数、MLL遺伝子再構成の有無を因子として多変量解析を行ったところ、Fas遺伝子低発現および白血球数高値(20万/μL以上)が独立の予後不良因子であった(Hazards ratio, Fas : 2.76, p=0.043, 白血球数:2.98, p=0.049)。 4.結論 乳児ALL細胞におけるアポトーシス関連遺伝子の発現量は新たな予後因子のひとつとなり得る。
|