研究概要 |
本研究は,HOX遺伝子の機能異常と白血病発症の関連を解明することを目的とする.今年度までに,研究材料として,白血病を含む小児がん患者の正常B細胞をEBウイルスに感染・不死化させ,208症例由来のB細胞株樹立に成功した.また,成人の消化管組織由来のcDNAを用いて,WAVE systemを利用したreal-time PCRを行い39種のHOX遺伝子の発現解析を行った.その結果,39種のHOX遺伝子のうち,前腸由来の組織(食道,胃)で高発現を示す遺伝子群は,後腸由来の組織(上行結腸,横行結腸,下行結腸,直腸)で低発現を示し,後腸由来の組織で高発現を示す遺伝子群は前腸由来の組織で低発現を示すことを明らかにした.これらの結果は,HOX遺伝子群は消化管の前後径に沿って位置特異的な発現を示すことを表し,HOX遺伝子群の異所性発現は消化管がんの発症と関連する可能性を示唆した.今年度、これらのデータを論文にまとめ報告した.この実験系を用いて,正常造血幹細胞および白血病細胞におけるHOX遺伝子群の発現解析を行った.HOX遺伝子群の正常造血幹細胞における発現パターンと白血病細胞における発現パターンを比較することによって,HOX遺伝子の機能異常と白血病発症の関連を検討した.また,白血病患者由来B細胞のDNAを用いてHOX遺伝子の変異解析を行い、HOX遺伝子のgermline変異と白血病易罹患性との関連を検討した。
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