研究概要 |
本研究は、抗原蛋白デスモグレイン(Dsg)1の表皮でのDsg3との発現量と局在の差により尋常性天疱瘡との臨床症状の差が説明されている落葉状天疱瘡(PF)をモデルに、細胞骨格・接着分子の機能解析を目的とする。ヒト有棘細胞癌由来株DJM-1細胞ではDsg1の発現量が不十分であったため、本年度は正常ヒト角化細胞(NHK)のカルシウム濃度依存性分化系モデル(カルシウム濃度0.09→1.8mMシフトによる角化モデル)を用いて検討を進めた。0.09mMが表皮下層の、1.8mMが上層環境のモデルであるが、Dsg1は0.09mM下でも存在し、カルシウムシフト4日後には逆に減少、一方Dsg3は1.8mMへのシフト1日後より増加し、Dsg3は表皮下層で優位、Dsg1は上層で優位とするin vivoでの見解と異なり、臨床症状の差は量の差のみに依らない可能性を示唆する。またデスモコリン3はシフト1日後に109KDから100KDに変化した上で2日後から減少し、Dsg1,3以外の細胞接着構造蛋白の影響を示唆する。NHK細胞は培養で増殖添加剤としてハイドロコーチゾンを使用し、10^<-9^〜>10^<-5>Mの範囲では上記の結果に明らかな差はなかったが水疱症の治療薬であるステロイドの影響は考慮に値する。天疱瘡患者でELISA法を用いて測定した抗Dsg1,3抗体の抗体価の推移と治療薬と臨床経過の関連を詳細に観察し、治療途中では必ずしも抗体価の上昇に臨床症状の再燃が並行しないこともあり(ACD-JDA Joint Meeting2003年9月発表、稀少難治性皮膚疾患に関する調査研究班平成15年度第2回総会2004年3月発表)、ステロイドやその他の治療薬の影響で表皮細胞に病因自己抗体不応の状態が誘導される可能性が臨床面から示唆され、今後これらの薬剤を添加した培養環境での検討により臨床と直結した研究に発展すると考えた。
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