研究概要 |
血管新生は,乾癬を始めとする皮膚疾患の病態に深く関与しているが,これに関与する因子として,vascular endothelial growth factor (VEGF)がある.我々は,乾癬の治療薬で免疫抑制剤でもあるcyclosporine A(CyA),FK506,およびマクロライド系薬剤であるroxythromycin (RXM)が表皮細胞のVEGFの産生にあたえる直接的影響をin vitroで調べた.培養表皮細胞株(DJM-1)は,無刺激下で300pg/mlのVEGFを産生したが、これは0.001-1μMのCyAまたはFK506添加によって20-30%の抑制がみられた.RXMは影響を与えなかった.同細胞をphorborで刺激すると定常状態の3-5倍(1500pg/ml)程度のVEGFの産生を認めたが,これは0.001-0.1μMのCyAまたはFK506添加によって,10%程度の軽度の抑制がみられた.10μMの濃度のCyAまたはFK506添加では,全く影響をうけなかった.同様の実験を正常表皮培養細胞にて行った.驚くべきことに,正常表皮細胞は定常状態でDJM-1の3倍程度(1000pg/ml)のVEGFを産生し,またphorborの刺激によって10%程度しか産生の増強がみられなかった.また,このVGEFの無刺激下および刺激下のVEGFの産生は,0.001-0.1μMのCyAおよびFK506添加では影響がなかったが,10μMの濃度で著明に(50-90%)抑制された.RXMはむしろ産生促進的に働いていた.これらの結果から,1)表皮細胞の由来によりVGEFの産生は著しく異なっていること,および2)免疫抑制剤によってVGEFは産生が抑制されること,しかし3)免疫抑制剤による産生抑制のパターンは表皮細胞の由来によりかなり異なっていることが判明した.
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