研究概要 |
<研究結果> H-E染色上、ラジオ波凝固療法(以下:RFA)後の焼灼部は層構造を呈し、この層構造は直後から3日目までの間に3層から5層に変化していた。焼灼部辺縁では細胞萎縮、核の縮小化と核クロマチン濃縮などの形態変化が経時的に進行し、24時間以後の標本では周囲正常部と明瞭に区別されるようになった。定量評価ではRFA直後と2時間後、2時間後と24時間後の肝細胞密度増加、核縮小化が統計的に有意であった(P<0.01,Mann-Whitney U-test:細胞密度,Student's t-test:核サイズ)。核濃度は直後と比較して24時間後に統計学的有意な上昇を示した(p<0.01,Student's t-test)。 TUNEL染色ではRFA直後には陽性細胞が認められず、2時間後の標本では、中心部に相当するH-E染色上の第1層、第2層の一部で陽性を示した。24時間以後の標本では辺縁部に相当する第3層、第4層までTUNEL陽性域が拡大した。辺縁部のTUNEL陽性率は経時的に上昇し(P<0.01,analysis of variance:ANOVA)、7日目には全ての細胞が陽性を示した。 HIF-α染色では、FEA直後からH-E染色上の形態変化の見られる領域に一致して陽性を示していた。特に辺縁部第3層、第4層では陽性率が極めて高く、持続的な強い虚血状態にあることが判明した。 生化学的検討では、辺縁部組織のDNA電気泳動で24時間後に初めて明瞭なDNA ladder formationが検出された。Caspase-3活性はRFA直後、2時間後では低値を示し、24時間後、3日後で著明な上昇を示していた。 <結論> RFA後の焼灼部辺縁は、形態学的にも生化学的にもアポトーシスの条件を満たしていた。辺縁部におけるアポトーシス誘導と経時的形態変化観察の結果を総合的に判断すると、病理学的な治療効果範囲判定は24時間以後に行うのが確実な手法と考えられた。その際の判定には、煩雑な生化学的手法を用いなくともH-E染色のみで十分判定可能である。ただし、TUNEL染色を併用すれば一層精度の高い治療効果範囲判定が可能である。
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