研究概要 |
【目的】悪性腫瘍を放射線で制御しようとするとき,その腫瘍細胞の放射線感受性は治療成績に大きく影響する.一般的に核・細胞質比の大きな細胞は放射線に感受性であり,細胞質が大きく,細胞質内にミトコンドリアの多い細胞か抵抗性であると言われてきた.事実,ミトコンドリアを多く含む筋肉や神経細胞から発生した悪性腫瘍は放射線に抵抗性であることが多い. 【材料と方法】ミトコンドリアDNAを有する細胞株(HelaS3)とその細胞を処理しミトコンドリアDNAを不活化した細胞株(ρ^09A),更にその細胞にミトコンドリアDNAを移植した細胞株(TTIII)の3種類を用いた.小動物放射線照射装置(STABILIPAN2,シーメンス社製)を用いて照射しコロニーアッセイ法により生存率を検討した.またフローサイトメーターを用いてアポトーシスの出現について検討した. 【結果】それぞれの細胞株のdoubling timeはHelaS3で約21時間,ρ^09Aで約32時間,TTIIIで約24時間であった.それぞれの細胞株の放射線に対する感受性はρ^09A細胞株でやや低い傾向があったもののそれらの間に明らかな有意差は認められなかった.またどの細胞株も照射によりアポトーシスの出現はわずかであり,それらの間に明らかな差はないと思われた. 【結論】今回の検討ではミトコンドリアDNAの状態による放射線感受性には明らかな差異は認められなかった.またアポトーシスについてはどの細胞株もその出現度が低く,差が明らかにならなかった.しかし,アポトーシスにいたる経路における分子生物学的な解析あるいはMnSODについての解析など時間の関係で検討できなかった部分については未知であり今後更なる検討が必要と思われた.
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