研究概要 |
生後7週齢ラットの左大脳半球にC6グリア細胞を移植し、抗癌剤(ACNU)に非耐性の脳腫瘍モデル(グループA)と、耐性のモデル(グループB)を10匹づつ作成した。4.7T高磁場動物用MR装置を用いて、ラット脳の病側(左大脳半球)と健側の^1H-MRS測定を行った。測定にはbody coilを用いて、TE/TR=25/2000 msec,NEX=256の条件の下,局在化手法にPRESS法を、水抑制手法にCHESS法を採用し、5mm^3のVOIを設定して施行された。ACNU投与前、投与6時間後、10時間後に計測した。前回のグループAとBにおけるFDG uptakeの経時推移の結果から、最適MRS測定時間を投与後6時間と10時間とした。ラット脳のMRI撮影を行い脳腫瘍の存在を確認してから、1mg/mlの濃度で1ccのACNUを投与した。 データ収集に成功したのは、グループAで5匹、Bで6匹であった。定量的解析では両グループとも検定で経時変化に有意差を認めなかった。これはbody coilや、定量における基線同定の困難さに起因するものと考えられた。Crを用いた相対的解析ではグループAの病側で、投与6時間後のCho/Crが有意(p<0.001)に上昇し、10時間後で低下を示した。これはFDGの経時変化に一致していた。健側ではCho/Crに経時変化は認められなかった。グループBでは、投与6時間後でCho/Crが上昇したモデルも存在したが、グループ内の検定では有意差を認めなかった。このことから、MRSには抗癌剤による腫瘍細胞の膜代謝変化や膜破壊を早期に反映できる可能性があると思われた。一方FDGでは抗癌剤による傷害部位の修復に必要なエネルギーを、早期に反映している可能性があると思われた。またNAAを用いた相対的解析では、グループA,Bとも、病側と健側で投与6時間後でCr/NAA,Cho/NAAが上昇を示した。これらは抗癌剤の神経細胞への早期影響を示唆しているものと思われた。 以上の研究により、FDGと^1H-MRSは抗癌剤効果の早期判定に有用であることが示唆されたが、MRSは定量化や代謝産物の臨床的意義など未解決な問題が多く存在し、臨床応用には更なる研究が必要と思われた。
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