研究概要 |
本研究は,検査時間を短縮化できる高速・低コストPET装置を開発することを目標とする。具体的には,体軸方向・装置有効視野を60cm以上と従来になく大きくすることで検査時間の短縮化を図る。また,高感度化に伴う偶発同時計数及び散乱線成分増加への対処策として,通常のセプタよりも効果を弱めた特殊なセプタ(粗セプタ)を開発し,それによる新しい散乱補正法を開発する。モンテカルロシミュレーション法によりこのようなPET装置の物理的特性を分析・評価する。関連する要素技術の研究開発を進める。以下にこれまでの成果の概要を記す。 (1)コスト削減に向け,BGO(酸化ビスマスゲルマニウム)よりも安価なPWO(酸化鉛タングステン)を検出器に用いたPET装置の物理特性をモンテカルロシミュレーション法により評価。 (2)粗セプタの物理特性をモンテカルロシミュレーション法により評価。 (3)粗セプタを用いた新しい散乱補正法をモンテカルロシミュレーション法により定量的に分析。(本プログラム開発に関連して平成15年度日本医学物理学会最優秀論文賞受賞) (4)装置計数率特性を正確に評価するための計数率モデルを考案。(原著論文にて発表) (5)空間分解能を犠牲にせずに検出感度を向上させる放射線検出器について特許を出願。 (6)検査中の被験者の動きを計測・補正するための新しい手法について特許を出願。 (7)検査中の臓器の動きを超音波プローブによりモニタする手法の検討。(原著論文にて発表) (8)上記研究成果などに基づきプロトタイプ装置が完成。試験的がん検診の開始。 今後は,関連する要素技術の研究開発をさらに進め,より高性能で有用なPET装置の開発へと発展させる予定である。
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