研究課題/領域番号 |
14770550
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研究種目 |
若手研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
研究分野 |
腎臓内科学
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
前島 洋平 岡山大学, 医学部・歯学部附属病院, 助手 (10343287)
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研究期間 (年度) |
2002 – 2003
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研究課題ステータス |
完了 (2003年度)
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配分額 *注記 |
4,800千円 (直接経費: 4,800千円)
2003年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
2002年度: 2,400千円 (直接経費: 2,400千円)
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キーワード | 糖尿病性腎症 / 血管新生 / VEGF / angiopoietin-1 / angiopoietin-2 / tumstatin / nephrin / streptozotocin誘発糖尿病 / CD31 |
研究概要 |
現在、我が国において維持透析患者の原因疾患では、糖尿病性腎症が第一位でありその進展機序の解明およびそれに基づいた新たな腎症進展抑制治療法の開発は、腎臓内科学において重要な課題である。糖尿病性腎症早期の段階で、糸球体濾過面積が増加することが報告されているが、この時新たな毛細血管の形成・既存の血管のわずかなelongationといった「血管新生」様の現象が認められる。tumstatinは血管基底膜構成細胞外マトリックスであるIV型collagenのα3-chainのNC1 domainで血管新生を抑制する。tumstatin(244アミノ酸)の血管新生抑制作用の由来するT8-peptideをstreptozotocin誘発糖尿病マウスモデルに投与したところ、腎重量/体重比の増加、糸球体過剰濾過、アルブミン尿、糸球体肥大、糸球体細胞数の増加が有意に抑制された。F4/80抗体を用いた検討により、糸球体内のmonocyte/macrophage浸潤を評価したところ、F4/80陽性細胞数が糖尿病群において増加していたが、tumstatin peptide投与群において減少していた。さらに、CD31陽性の糸球体係蹄数の増加はtumstatin投与群にて有意に抑制されていた。以上より、糖尿病性腎症早期に認められた血管新生様の変化がtumstatin peptide投与により抑制され、治療効果が認められた。次に、血管新生誘導因子であるVEGFや血管安定化に関与するangiopoietin-1、そしてそのantagonistでありVEGF存在下にて血管新生を誘導するangiopoietin-2等の発現変化を検討した。摘出腎皮質部より抽出したcell lysateを用い、immunoblotを行った。糖尿病群にて、VEGF発現は対照群に比して有意に増加したが、tumstatin peptide投与(2もしくは3週間)により、その増加が有意に抑制された。同様に糖尿病群にて、angiopoietin-2発現は対照群に比して有意に著増を認めたが、tumstatin peptide投与により、その増加が有意に抑制された。angiopoietin-1の発現は糖尿病群にて変化を認めず、tumstatin peptide治療群においても特に変化はなかった。糸球体上皮細胞(podocyte)間のslit膜は糸球体濾過調節に重要な役割を果たすが、その構成蛋白の一つであるnephrinの発現が糖尿病性腎症において低下することが報告されている。また、近年の報告にて糸球体内皮細胞とpodocyteとの相互作用が示唆されているが、tumstatin peptide治療群におけるnephrinの発現変化を検討した。糖尿病群にて、nephrin mRNA発現は対照群に比して有意に低下し、糸球体上皮細胞における蛋白発現は対照群のpodocyteパターンに比して変化を認めた。tumstatin peptide投与により、nephrin mRNA発現の増加、組織学的蛋白発現パターンの改善を認めた。tumstatin peptideがVEGF, angiopoietin-2等の発現を調節することにより、血管新生様変化が抑制され、さらに間接的にnephrin発現の回復及びアルブミン尿の減少を認めたものと考えられた。(以上の結果を現在投稿中である。)また、培養糸球体内皮細胞を用いた検討を現在行っている。
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