研究概要 |
腎不全長期合併症の病態におけるカルボニルストレスとその消去因子の意義について,主として臨床的側面からの検討でいくつかの新たな成果を得た. イタリアのZoccaliらとの85名の血液透析(HD)患者を対象とした共同研究で,カルボニルストレス蛋白修飾最終産物であるpentosidineの血中レベルが血中PTH,骨型alkaline phosphataseレベルと逆相関することを示し,カルボニルストレスが腎不全における低骨回転性の骨代謝障害に関与する可能性を臨床的に初めて示した(Panuccio V, et al. Am J Kid Dis;40:810-815.2002). また,日本国内10施設608名のHD患者を対象とした多施設共同研究で患者背景因子,既往歴,透析条件,服薬内容,advanced lipoxidation end product (ALE)であるmalondialdehyde (MDA)を含む生化学的指標と予後の関連を横断的・後方視的に検討し,高感度C reactive protein (HSCRP)が極めて強力な死亡リスク予測因子であり,生体内カルボニルの主要な内因性消去因子である血清アルブミンレベルの上昇ならびにangiotensin converting enzyme inhibitor (ACEI)またはangiotensin II receptor blocker (ARB)の服用が有意の総死亡リスク軽減因子であることを明らかにした.ACEI/ARB使用群は非使用群に比し血圧が有意に高値であるにもかかわらずHSCRPは有意に低値でMDAが低値の傾向であったことより,ACEI/ARB使用が血圧コントロールと独立してその抗炎症特性や,最近基礎的検討において示されたARBのカルボニル消去活性(Miyata T, et al. J Am Soc Nephrol;13:2478-2487,2002)などを介してHD患者の動脈硬化性疾患をはじめとする合併症による死亡リスクを軽減させる可能性が示唆された(Asahi K, et al. Nephrol.Dial.Transplant;18(suppl.4),726,2003). 以上の知見は腎不全長期合併症の諸危険因子とカルボニルストレスの内因性,外因性消去因子とが関連し,これらの制御という観点からの治療的アプローチが臨床的にも有意義であることを裏付けるものと考えられた.
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