研究概要 |
新生仔豚頭11頭を対象に,段階的な低酸素負荷での吸光係数と散乱係数の変動を検討した.吸入酸素濃度(FiO2)を100%から4%まで段階的に変動させ各FiO2でのTRS測定を行い,同時に動脈血(SaO2)または上矢状静脈血Hb酸素飽和度(SvO2)を測定した.測定はTRS(TRS-10 system,浜松ホトニクス社製)を使用し,プローブを矢状縫合に平行に投光受光部間距離を30mmとして頭部皮膚上に装着した.低酸素負荷時の吸光係数は,FiO2=0.21と比較し,760nmと800nmではFiO2が0.15以下で,830nmではFiO2が0.08以下で有意に増加した.散乱係数は,FiO2の変化による変動は認めなかった.吸光係数とSaO2またはSvO2との関係では,760nmと800nmnにおいて,両者と有意な負の相関を認めた. 新生児において,光路長について発達的に検討した.対象は当院NICUに入院した新生児10例(修正在胎週数29.9〜44.9週),仰臥位で自然睡眠時に計測を行った.測定はTRSを使用し,前額部でプローブ間距離を23.8〜35.0mmに設定して計測した.differential path length factor(DPF)は,760nm:5.00±0.69,800nm:5.21±0.76,830nm:4.82±0.69であり,各波長間におけるDPFの有差異は認めなかった.DPFと修正在胎週数の関係は,これまでの報告ではDPFは年齢とともに増加するとされるが,我々の検討では3波長とも両者の相関を認めなかった. 新生児における脳内のヘモグロビン(Hb)酸素飽和度とHb量の絶対値測定を行い,修正在胎週数における変化を検討した.対象は当院NICUに入院した在胎25週から40週,出生時体重657gから3630gの新生児22名とした.生後日齢14までに脳内のHb酸素飽和度とHb量を測定した.測定はTRSを使用し,投光部受光部間距離を28-32mmとして前額部に装着した.測定時間を1秒とし,児の状態の安定した連続1分間の値を平均した.脳内Hb酸素飽和度とHb量はそれぞれ73.8±4.5%,51.0±9.32μM(mean±SD)であった.脳内Hb酸素飽和度は,修正在胎週数が進むにつれて減少し(r=0.538,p=0.0087),修正在胎週数とHb量は相関を認めなかった.新生児期における脳内Hb酸素飽和度とHb量の発達的検討は報告がない.
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