研究概要 |
近年、アルドステロン(Aldo)の心臓への直接作用が示され、臓器障害との関連が示唆される。AldoにはDNAの転写を介するジェノミックアクションとそれを介さないノンジェノミックアクションの全く異なる作用機序が発表されたが、臓器障害との関連は明らかでない。本研究ではジェノミックアクションとノンジェノミックアクションを評価するため、ラットにAldoとそのジェノミックアクション阻害薬であるスピロノラクトン(SPLR)を同時に慢性投与し、Aldoの標的臓器における細胞外マトリックスの評価、組織ミネラルコルチコイド受容体mRNAの発現、臓器障害を反映する因子のmRNA発現などを検討した。8週齢のWistar雄ラット(約300g)を1)対照群、2)Aldo群(Aldo 90μg/kg/day, s.c.)、3)Aldo+SPKL群(特異的MR拮抗薬spironolactone 10mg/kg/day, s.c.)、4)Aldo+RU群(特異的GR拮抗薬Ru486 20mg/kg/day, s.c.)に分け、2ヶ月間投与。血圧、体重を測定し2ヶ月後に心臓を摘出、BNP、sgk (serum and glucocorticoid-regulated kinase)、gadd 45 mRNA発現をRT-PCRにて検討した。血圧はAldo群で2ヶ月後に投与前および対照群に比べ有意な上昇を示したが、主にSPLR併用にて抑制されたが不完全な抑制であった。Aldo群において心臓BNP、sgk、gadd 45 mRNA発現の有意な増加を認めたが、いずれもSPRLの単独併用により完全に抑制された。Aldoの慢性投与は心臓の遺伝子群発現に影響を与えたが、その作用は古典的Aldo阻害薬により完全に抑制された。以上から、Aldoの慢性作用は主にジェノミックアクションによるものであると考えられた。
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