研究概要 |
ストレプトゾトシン誘発1型糖尿病ラットを用いて,触覚,機械的並びに熱刺激に対する知覚反応について経時的に検索を行った。 1.モノフィラメントを用いた触覚刺激に対する反応; 糖尿病発症後1週までに触覚刺激に対する過敏反応が出現し,2週目以降は正常ラットと同等の反応性を示したが,再び20週目以降では触覚過敏を示した。 2.痛覚計を用いた機械的刺激に対する反応; 糖尿病発症1週目にはすでに機械的刺激に対する痛覚過敏を示し,2週目まで悪化傾向を示したが,以降26週目までの観察期間中においては同程度の痛覚過敏を示した。 3.ホットプレートを用いた熱刺激に対する反応; 糖尿病発症1-2週目までは熱刺激に対する痛覚過敏を示したが,それ以降26週目までの観察期間においては正常ラットと有意な差は認めなかった。 4.輻射熱を用いた熱刺激に対する反応; 糖尿病発症2-3週目までは熱刺激に対する痛覚鈍麻を示し,一旦4-6週目において正常ラットと同等の反応性を示したが,再び8週目以降は知覚鈍麻に転じた。 以上の観察期間中におけるこの糖尿病ラットの血糖値は持続的な高血糖(400mg/dl以上)を示していた。即ち,このモデルにおいては,糖尿病発症初期より認められる多様な知覚異常の推移は,持続性の高血糖のみからは説明困難と考えられた。本研究代表者はこの多様な知覚異常の成因に,このモデルにおけるインスリン欠乏から誘導される神経内インスリン受容体のシグナル異常が関与しているものと推定している。現在,この仮説を証明するため,分子生物学的手法を用いて鋭意検索中である。
|