研究概要 |
H14年度までの研究で、脳内SREBPsは過食や絶食あるいは再摂食といった生理的な環境変化には呼応せず、一定の発現を維持していることが判明した。また食行動に最も鋭敏に反応するインスリンとレプチンを第3脳室内に投与した時のSREBPの発現を検討したが、やはり変化は認められなかった。このことは脳内SREBPの発現は末梢とは独立して制御されており、かつ一時的な食環境の変化では、脳内脂肪酸合成は影響を受けず安定していることを示すものである。本年度の研究では以下の事象が明らかとなった。1,絶食、再摂食時に脳内および肝臓のIRS1発現量は変化なかったが、視床下部のIRS2発現量は絶食により低下し、再摂食で上昇する。一方、肝臓のIRS2発現量は絶食により増加し、再摂食で低下する。このことは末梢と中枢ではインスリンシグナルに違いがある可能性を示している。またSREBPの制御はIRSの発現量とは無関係であると考えられる。2,加齢に伴って、脳内SREBP1の発現は明らかに増加した。一方、SREBP2やFASの発現は低下した。このことは脳内FASの発現は肝臓と異なり、SREBP1の制御下にないことを示している。また脳内SREBPsの発現は食行動の変化に呼応しなかうたが、加齢という負荷には左右されている。H14年度までの研究の結果より、,この変化はインスリンやレプチン量、あるいは末梢の代謝変化によるものではないと考えられる。加齢に伴ってSREBPsの発現を変化させた因子は同定できていないが、この事実は加齢により脳内脂質代謝の恒常性が失われることを示している。
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