研究概要 |
培養血管内皮細胞および培養腎メサンギウム細胞を用いて,高グルコース(HG)による細胞障害における酸化的ストレスおよびアポトーシスの関与について研究を行うにあたり,まず1)HG毒性に感受性となる培養系を作製し,2)HG負荷による細胞死がアポトーシスによるものであるかを確認し,更に3)HGによる細胞障害機序を検討している。 1)一般に培養血管内皮細胞の酸素毒性感受性は不安定であるが、その原因が鉄含量の変化に関係あるのではないかと考え,ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)の継代培養細胞中の鉄含量と酸素毒性感受性との関連を調べた所,継代に伴って鉄含量は著しく減少しており,Fe/8-ヒドロキシキノリン(Fe/8HQ)を添加すると細胞の鉄含量は添加濃度に対して直線的に増加した。同様に培養腎メサンギウム細胞でも酸素毒性感受性が不安定であった。またHG毒性は酸素毒性に関与していた。鉄含量を高めた細胞では過酸化水素毒性が増強されたことから,生存率に影響を与えず過酸化水素毒性およびHG毒性に感受性となる至適鉄ロード条件を培養HUVECおよび培養ラットメサンギウム細胞において決定した。それぞれHBSSで洗浄後,0.1μM,0.5μMのFe/8HQで30分処理することで,安定なHG毒性感受性を取得することができ,この細胞系をHGで培養したものを糖尿病性血管障害モデルとして以後の解析に用いることとした。予備的に行った実験で,糖尿病モデルは正常細胞モデルに比べ細胞増殖率が低く、過酸化脂質の蓄積は大きいことが分かった。その差は高酸素ストレスをかけた場合一層顕著に有意であった。 2)作製したHG毒性感受性細胞系において,HGによって引き起こされる細胞障害がアポトーシスによるものであることを,蛍光顕微鏡を用いた形態学的観察により確認した。またヘキスト染色後マイトーシスとアポトーシスの細胞カウントを行い,HGによる細胞増殖の低下はマイトーシスの低下ではなくアポトーシスの亢進によることを明らかにした。 3)糖尿病性血管障害モデルとしての培養細胞系を用いて生細胞における抗酸化レベルを検討した所,グルタチオンの補酵素活性が著しく低下していたため,HGによるグルタチオンの変化を培養細胞中で検討中である。
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