研究概要 |
本研究は、臓器移植での拒絶反応においてはT細胞がkeyとなって作用することは明らかであることから、グラフト特異的に反応するT細胞レセプター(TCR)集積クローンの分子生物学的解析を行ない、ある特定のT細胞に対する免疫抑制治療を行なうことを目的とする。 当初は肝移植、および腎移植患者全ての血液を採取する予定であったが、肝移植では移植患者のほとんどが乳幼児であることから採血量がとれず、検体がなかなか収集できていない。また、腎移植では移植件数そのものが年に1例か2例の状況で、こちらも検体数が思うようにのびていない。そこで数例の症例で、末梢血からリンパ球を得、共通シークエンスの部でPCR増幅し、泳動の後、各々のVα,Vβの各々のプローブを添加し高頻度に出現するVα,Vβファミリーが存在するか否か調べた。いまだにプレリミナリーな結果ではあるが、CDR3のなかである特定のパターンを示すもの、つまり、特定のCDR3を使用する頻度が高いものがあることがわかった。これは、拒絶反応がある特定の種類のリンパ球の反応によって起こっている可能性を示唆するものである。 また、すべてのVα,Vβファミリーのそれぞれに特異的プライマーを用いてPCR増幅し、各々のPCR産物をPCR-SSCPの手法で、すなわち熱処理で一本鎖に変性した後、非変性ポリアクリルアミドゲルで電気泳動、トランスファー後プローブを添加し特定のバンドの出現の有無を調べ、特定のバンドを確認できれば、これがすなわち超可変領域の共通配列であり、この部を抽出して塩基配列を決定する必要があると思われる。 また、この実験はヒトの遺伝子配列を直接調べるものではないが、手法として遺伝子解析を用いるため当大学の倫理委員会に研究計画書を提出し、毎年研究の進行状況と検体提供者や家族の人権および利益の保護状況について報告し、検体に関しては匿名化であり外部に対しては一切氏名を公表していない。
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