研究概要 |
protease activated receptor (PAR)が癌の進展に関与しているかを胃癌・大腸癌にて検討した。 1.PAR1:前年より症例を増し大腸癌87例においてRT-PCR法により検討した。24.1%に癌部での発現亢進を認めた。DukesA/BよりC/D例の方が発現が有意に多く、リンパ節転移や肝転移は有意に相関したが、他の因子とは有意な相関を認めなかった。更に切除肝転移巣5病変は全て発現していた。予後との関連は認めなかった。以上より大腸癌の転移、特に肝転移に関与していると示唆された。胃癌でも検討したが進展との関連は認めなかった。大腸癌細胞株6株は全てに発現を認めたため、メカニズムを調べるのに減弱株に発現導入したが評価が難しく、発現抑制を行いさらに検討を進めている。 2.PAR2:前年よりさらに検討を進め胃癌187例に対して免疫染色にてPAR2発現を検討した。細胞膜および細胞質に発現を認め、42.1%において陽性を示し、一部の症例では先進部に特に強い発現を認めた。病期、分化度、肉眼型には相関を認めないが、脈管侵襲や肝転移と有意に相関した。また陽性例は予後不良であった。次にトリプシンの発現を検討すると、両者の発現は有意に相関しており、発現部位もほぼ一致していた。以上よりトリプシンとともに胃癌の進展に関わっている可能性が示唆され、また作用メカニズムもオートクラインによると思われた。 3.PAR3,4:PAR3,4の発現を胃癌及び大腸癌細胞株を用いて検討した。PAR3は9株/13株に発現を認め、PAR4は全体に弱発現であった。大腸癌切除例における検討も行ったが臨床病理学的因子との相関は認めなかった。 以上より大腸癌においてはPAR1が、胃癌においてはPAR2がその進展に関与している可能性が示唆された。PAR3,4は癌の進展への関与はないものと思われた。
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