研究概要 |
胃における多段階発癌は、正常細胞から早期癌、進行癌に至る過程に、様々な遺伝的変異ならびに後成的な変化が蓄積している。胃癌は組織学的に高分化型と低分化型に大別されるが、これらの遺伝子異常の中には両方に共通するものとそれぞれに特異的なものがある。取り分け前者は癌の発生、後者は進展に関わるとされている。発癌に関する遺伝的要因は世界規模で研究がなされ、顕著な癌家系に関する研究はめざましく進展してきたが、一般的な発癌の高リスク群の遺伝的要因に関する知見は殆どない状況である。 本研究計画では胃癌においての遺伝的発癌の高感受性を遺伝子レベルで解析することにより、新しい癌関連遺伝子を検出・解析することを目的とした。 癌の体質遺伝に関与すると考えられる遺伝子をすべて同時に解析することは困難であるため、これまでに明確な報告がない遺伝子に焦点をおき、胃癌77検体を既知の癌関連遺伝子群(p53,RB,APC,PTEN,DPC2,DMBT1等)について8種のMSマーカーでLOH解析を行った。データベース上で遺伝性腫瘍との関連が示唆される染色体領域に位置するものについても9種のMSマーカーでスクリーニングを行った。その結果、既報のp53,RB,APCのLOHは高頻度であったが、他の癌遺伝子では20-40%程度であった。また候補群では2q24,4p15.3,17q21で40%程度であったが、その他のMSマーカーでは20%以下と胃癌における優位なLOHは検出することは出来なかった。 現在は新たな癌抑制遺伝子候補群マーカーでスクリーニングを開始しており、中程度のLOHが確認された2q24,4p15.3,17q21の領域については遺伝性腫瘍関連遺伝子候補としてエキソン・イントロン構造の解析を進めている。またMS-RDA法によりメチル化領域のことなる遺伝子を同定など新たな試みを検討している。
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