研究概要 |
本研究の目的は,脳震盪の病態生理,特に反復した場合の蓄積効果について実験的に明らかにし,神経栄養因子投与による治療効果も明らかにすることである.まず脳震盪の動物モデルはMarmarouらのびまん性脳損傷モデル(J Neurosurg 80:291-300,1994)を改良して作製した.すなわちラットを包水クロラール腹腔内投与による全身麻酔下に,頭部にヘルメットを装着してウレタンマットの上に置き,重りを頭部に落下させで角加速度による外傷を作製した.重りの高さを変えることにより衝撃の強さを調節した.これまでの検討で,450gのおもりを1.5mの高さより落とすと,一時的に呼吸的に呼吸停止を来たし,死亡率20%で中等度から高度の脳損傷を作製できた.組織学的にも軸索損傷が鍍銀染色とAPPの免疫染色で証明できた.次におもりの高さを種々に変化させ(50,75,100,125cm)外傷を作製した.この意味は実験は麻酔下に行われるため,ちょうど脳震盪のみを起こす強さの衝撃を見つけるのが難しく,多くのバリエーションの中から,死亡率は0%で呼吸が停止なく,臨床的には無症状であるが,軽微な脳損傷か組織学的にある条件を見つけるためである.現在,種々の条件の動物の組織学的に検索中である.来年度は至適衝撃強度を決定したうえで,反復による障害蓄積性を組織学的及び高次脳機能の面から評価する予定である.なお,高次脳機能評価のためのビデオ行動解析システムも現在準備中である.
|