研究概要 |
[目的]前十字靭帯再建術のさらなる成績向上のためには、骨-移植腱間の固着の改善/加速化が急務である。しかしながら、これまで、この部位での生物学的固着の様式すら十分理解されていなかった。そこで我々は、動物モデルを用いて免疫組織学的にこれを明らかにすることを目的とした。 [方法]成熟日本白色家兎25羽を用い.遊離半腱様筋腱を脛骨・大腿骨側に作製した骨孔に移植した.術後1,2,4,8週に各5羽ずつ屠殺し,脛骨側の免疫組織学的評価を行った. [結果]術後1週:骨-移植腱間に血管成分に富んだ肉芽様組織が形成され,一致してCD31,RAM-11,VEGF, b-FGF, collagen type 3の発現を認めた,術後2週:CD31,RAM-11は介在組織の減少とともに消退し,介在組織中に軟骨様細胞が認められるようになった.b-FGF, collagen type 3は腱辺縁まで,VEGFは腱中心にまで発現を認めた.術後4週:collagen type 3からなるSharpy線維様の線維が観察され,骨-移植腱の境界は不明瞭となった.軟骨様細胞は次第に減少し骨梁が形成された。VEGFの発現は消退したが,b-FGFは腱中心まで発現が認められるようになった.術後8週-骨梁に連続性が認められるようになり,b-FGFのみ腱中心までの発現を認めた. [考察]骨-移植腱の介在組織中でのCD31,RAM-11,VEGF, collagen type 3の発現・消退のパターンは,この部位に特異的なものではなく,通常の創傷治癒過程で見られる血管線維性肉芽組織のそれと同様と思われた.その後、この血管線維性肉芽組織を足場にして、内軟骨性骨化が骨孔壁より進行するが移植腱を侵食する事なく収束する。最終的に、type 3 collagenの一部が、腱と骨化層との間を橋渡しするanchoring fiberとして残存し、骨-移植腱の固着は終了するようである。 本研究結果は、第19回日本整形外科学会基礎学術集会および第5回日米欧加整形外科基礎学術集会にて発表を終えて、現在、英文雑誌へ投稿中である。
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