研究概要 |
前年度に引き続き、実験動物はハロタン麻酔下ラットを使用し,電気生理学的手法を用いて内因性セロトニンが海馬CA1,CA3野のシナプス伝達機構に及ぼす影響について追究した.内因性5-HT濃度を増加させるために選択的5-HT再取込み阻害薬(SSRI)の一つであるfluvoxamineを使用し、海馬長期増強(long-term potentiation ; LTP)の変化を検討した.CA1領域ではfluvoxamineによりLTP生成は抑制された.一方,CA3領域のLTPはfluvoxamine投与により影響を受けなかった.CA1におけるfluvoxamineによるLTP抑制作用は,5-HT_<1A>受容体拮抗薬NAN190により有意に拮抗された.しかしながら,5-HT_4拮抗薬GR113808および5-HT_7受容体拮抗薬DR4004による影響は認められなかった.すなわち,CA1領域における内因性5-HTのシナプス可塑性抑制には,シナプス伝達機構を調節している3つの5-HT受容体の中で5-HT_<1A>受容体が関与していることが示された.これらの結果は5-HT_<1A>受容体作動薬tandospiroe投与によりCA1領域ではLTPは形成されなかった事実によって確かめられた. 以上の結果から,fluvoxamineによるCA1,CA3領域のシナプス伝達効率促進作用には少なくとも3つの5-HT受容体-5-HT_<1A>,5-HT_7あるいは5-HT_4受容体が関与していること,また,これらの受容体による調節機構はCA1,CA3領域で異なっていることが明らかになった.
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